デジタル遺産は、不動産や宝石のように現物がなく、本人しか分からない情報で管理されているため、相続人がその存在を見つけられないことも想定されます。
この記事では、相続人になった方のために、デジタル遺産の調査方法やすべきこともご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
デジタル遺産とは何か
デジタル遺産とは、故人がデジタル形式で保管していた、金銭に関連する財産のことです。
具体的には、スマートフォン・タブレット・パソコンなどのデジタル機器を利用して、インターネット上の取引アカウントによって、ログインIDやパスワードで管理されている財産となります。
デジタル遺産の種類
デジタル遺産の種類はいくつかありますが、ネット銀行口座・ネット証券口座・FX・仮想通貨といった金融資産が代表的です。
その他、電子マネーの利用残高や、商品を購入できる各種ポイントやマイレージもデジタル遺産に含まれます。
| 種類 | デジタル遺産の具体例 |
| 金融商品 | ・ネット銀行の口座 ・ネット証券の口座 ・仮想通貨(暗号資産) ・FX(外国為替証拠金取引) |
| ポイント | ・各種ポイント ・マイレージ |
| 有料会員サービス | ・定期課金サービス ・オンラインサロンなどの月額費 ・サブスクリプション契約 |
| その他 | ・電子マネーの残高 ・通販サイト |
見落としがちなのが、動画や音楽を楽しめる有料会員サービス(サブスクリプション)です。
誰も把握しないまま放置すると、月額費用が膨らんでしまうため、特に注意が必要です。
デジタル遺産の現状
将来デジタル遺産になりうるインターネットサービスを利用している人は、年々増加しています。
総務省「令和3年通信利用動向調査」によると、スマートフォンや携帯電話などのモバイル端末を保有している世帯は97.3%、パソコンを保有している世帯は69.8%とされています。
そしてインターネットの利用状況は83.9%、そのうち利用目的は「金融取引のため」と回答したのは21.6%と、と年々増加しています。
現状でも多くの方がデジタル遺産を保有していますが、将来的にはさらにその数が増えるといっても過言ではありません。
デジタル遺品との違い
デジタル遺品とは、金銭に繋がらない財産(遺品)のことで、デジタル機器本体に保存されているものと、インターネット上に保存されているものの2種類があります。
| 種類 | デジタル遺品の具体例 |
| デジタル機器本体に保存 | ・スマートフォンで撮影した写真や動画 ・パソコンに保存されている画像データやWordデータ ・ダウンロードした音楽データ |
| インターネット上に保存 | ・クラウドで保存されているデータ ・SNSサービスのアカウントや連絡先 ・個人ブログのデータ |
デジタル遺産とデジタル遺品の違いは、金銭価値があるかないかです。
デジタル遺品は直接金銭に繋がる財産ではありませんが、一般的には、デジタル遺品も含めてデジタル遺産と呼ばれています。
デジタル遺産と通常の相続財産との違い
デジタル遺産と通常の相続財産(遺産)の違いは、姿かたちが確認できるか否かです。
例えば、不動産であれば現物が存在しますし、銀行の預金口座などはキャッシュカードや預金通帳などが存在します。
しかし、デジタル遺産は主にデジタル形式で管理されているため、実体がなく目には見えないという特徴があります。

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相続におけるデジタル遺産の3つの問題点
デジタル遺産は、相続シーンにおいていくつかの問題点があります。
本人にしか分からない情報で管理されている
デジタル遺産は、本人にしか分からない情報で管理されています。
まず、スマートフォンなどのデジタル機器のロックを解除するパスワード(顔認証や指紋認証)が必要ですし、デジタル遺産が管理されているログインIDやパスワードを入力しないと、デジタル遺産の詳細を確認できません。
仮に二段階認証などが設定されている場合、すでに故人の電話番号を解約していては、SMSにてコードを受信できずにログインできなくなってしまいます。
特に金融資産のログインIDやパスワードは複雑に設定されているため、相続人が簡単にデジタル遺産の情報にはたどり着けません。
存在を見つけるのが難しい
デジタル遺産は、相続人がその存在を見つけるのが難しいです。
この理由は、デジタル遺産は基本的に郵便物がなく、故人が利用していたデジタル端末のアプリや、利用していたメールの受信箱をチェックしないと判明しないためです。
そのため、相続人がデジタル遺産の存在自体に気づかず、のちにトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
相続手続きが煩雑
デジタル遺産は、相続手続きが煩雑になりがちです。
この理由は、みなさんがイメージされるよりも、デジタル遺産の数が多いためです。
やっとの思いでデジタル遺産の存在を知ったとしても、すべての情報を整理した上で、相続財産に該当するか否かを確認して、相続財産の評価額を計算しなくてはなりません。
さらにデジタル遺産の場合、窓口は全てオンライン化されていることが多く、インターネットを使い慣れていないと、名義変更や解約も煩雑になってしまいます(相続時の取り扱いについて明確に定められていないケースもあります)。
デジタル遺産を放置することの危険性
相続において問題点が多いデジタル遺産ですが、そのまま放置するのは危険です。
この理由は、相続人に二度手間をかけることになったり、相続人が損失を受けたり追徴課税されたりといったトラブルに見舞われる可能性があるためです。
遺産分割協議をやり直す必要がある
相続が発生した場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、「誰が・何を・どれだけ取得するのか」を決める必要があります。
しかし遺産分割協議がまとまってからデジタル遺産の存在が分かった場合、そのデジタル遺産についての遺産分割協議をしなくてはなりません。
実務においては、すでに遺産分割協議が終わっている場合、そのデジタル遺産についてのみ、再度遺産分割協議を行うこととなります。
しかし、相続人全員のスケジュールを調整したり、遺産分割協議書をもう一部作成して全員の署名捺印をもらったり…といった手間がかかってしまいます。
相続人が損失を受ける可能性がある
FX・ネット証券の株式・仮想通貨などのデジタル遺産は、相続税の評価額を計算する際には「相続発生時の時価」が適用されます。
しかし、実際に相続人等が受け取る金額は、「解約時の価額」が適用されます。
つまり、デジタル遺産の存在に気付かず放置した結果、相続発生時に比べて価値が下がっていると、「税金を多く支払うのに受け取り金額が少なくなる…」といった事態に発展し、相続人が損失を受けることとなります。
期限後申告や修正申告する必要がある
相続税の申告義務がなかったものの、デジタル遺産が相続財産に追加されることで、相続税の申告義務が課せられるケースもあります。
相続税の申告期限を過ぎてから申告義務が生じれば「期限後申告」を、すでに相続税申告をした後でデジタル遺産の存在が明らかになった場合は「修正申告」をしなくてはなりません。
自ら期限後申告や修正申告をした場合、追徴税額の税率は低く抑えられますが、加算税と延滞税という二重のペナルティが課せられます。
なお、期限後申告であれば加算税の種類は「無申告加算税」、修正申告であれば加算税の種類は「過少申告加算税」となります。
申告漏れを指摘される可能性がある
財産価値の高いデジタル遺産の存在に気付かず放置していて税務調査が入り、申告漏れを指摘される可能性があります。
デジタル遺産の価額が大きければ大きいほど、申告漏れが発覚したときの追徴課税額も比例して大きな数字になってしまいます。
仮に故意の財産隠しだと判定されてしまうと、「重加算税」という最も重いペナルティが課せられてしまいます。
デジタル遺産にまつわる5つの相続トラブル事例
実体がないデジタル遺産だからこそ起こりうる、トラブル事例についてご紹介します。
この章でどのようなトラブルが発生する可能性があるのかを、予め知っておきましょう。
相続手続きが終わってから多額の仮想通貨が見つかった
相続手続きがが完了してから、多額の仮想通貨を所有していることが判明した事例です。
本事例においては、遺産分割協議のやり直しと、相続税の期限後申告を行うこととなりました。
仮想通貨は相続税の課税対象財産であるため、受け取る人によって納税額が変わります。
多額の仮想通貨は、相続税の申告や遺産分割協議に大きな影響を及ぼすため注意が必要です。
相続税の申告後にネットバンクの口座が見つかった
相続税の申告後に、ネット銀行の口座の存在が判明した事例です。
本事例においては、遺産分割協議のやり直しと、相続税の修正申告を行うこととなりました。
当初申告していた資産額に新たに判明した金額が加算されるため、加算分だけ相続税を追加で支払う必要があります。
また相続税の法定納期限を超過していたため、延滞税と過少申告加算税が課せられました。
通帳がないネット銀行の預金は、相続人が発見しにくい資産であるため、あらかじめ保有していることを伝えておきましょう。
FX口座を保有して取引していることに気づかずに損失が発生した
故人がFX口座を利用していることに気づかず、大きな損失が発生した事例です。
本事例では、小さな自己資金で大きな投資効果を得る「レバレッジ取引」を利用していたため、損失が投資した金額以上になっていました。
発生した損失は相続人が負担するため、追加証拠金という形で100万円以上請求されてしまいました。
FXの損益は毎日変わるため、相続人が素早く手続できるような準備が必要です。
4-4.スマホ決済サービスに財産を所有していた
故人がスマホ決済サービスに財産を所有していたのに、気付かないでスマートフォンを初期化・解約しまった事例です。
本事例では、何の手続きをすることなくスマホを初期化・解約してしまい、後に銀行の預金通帳からその存在が発覚しました。
スマホを財布代わりに使える「○○ペイ」などのスマホ決済サービスは、スマートフォンのロックを解除した上で、各サービス会社に問い合わせをしないといけません。
相続人の方はスマホ契約会社から決済サービス会社と連絡を取り合わなければならず、財産を取り戻すまでの手続きが煩雑になりました。
定期課金のサービスを解約せず料金を払い続けていた
音楽や映画など、月額費用が発生する定期課金サービスが残っており、相続発生後も料金を払い続けることになった事例です。
定期課金サービスは、利用者側から手続きを行わないと解約されません。
さらに多くのサービスが自動更新となっているため、料金の支払いが止まりません。
定期課金サービスの解約方法を相続人と共有しておくことで、無駄な出費を避けられるでしょう。
まとめ
相続で揉め事を避けるには、デジタル遺産を元気なうちに整理しておくことがとっても大切です。誰にどう引き継ぐか、あるいはどう処分してほしいかをハッキリさせておきましょう。
特に、遺言書を書いておいたり、死後事務委任契約を結んでおくと、財産のことだけでなく、デジタル関連のあれこれをどうしたいかを明確にできるので、残されたご家族の負担もグッと減らせます。これは、賢くスムーズな相続のためにはすごく有効な方法なんですよ。




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